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■キーストーン通信
相続や事業承継対策をお考えの方に知っていただきたいテーマを取り上げ、税理士・司法書士がわかりやすく解説しています。
執筆いただいているのは、相続・事業承継案件を数多く手がけ現場を知り尽くしている先生方です。
愛和税理士法人 代表税理士 岡田 隆先生
愛和税理士法人 社員税理士 戸﨑健志先生
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※2022年10月、司法書士法人おおさか法務事務所から、
杠司法書士法人及び司法書士法人ゆずりは後見センターへ改組しました。
■ライフナビ通信
事業承継・相続対策・ライフプランニングにまつわるお話し、その時々に思うこと・感じること・伝えたいことを各人のことばで綴っています。
2010年10月創刊号から2018年7月までは代表石野が、以降はコンサルタントやスタッフが持ち回りで執筆しました。
2014年8月1日【第103号】相続を意識したときに家族が感じるそれぞれの想い
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【ライフナビ通信 第103号】
~人生百年時代を豊かに生きる~
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目次
◎今日のテーマ
【相続を意識したときに家族が感じるそれぞれの想い】
◎編集後記
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◎今日のテーマ
【相続を意識したときに家族が感じるそれぞれの想い】
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こんにちは。
キーストーンFPコンサルタンツ代表の石野です。
夏真っ盛りの8月に入り、連日うだるような暑さが続いて
いますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
8月と言えば、お盆休み。
「お盆休み」は、家族とともに実家に帰省と言うのが、
定番と言えますが、恥ずかしながら私、この歳になるまで
「お盆」の由来について、知る機会がありませんでした。
そこで、ちょっと気になって、ネットで「お盆」の由来に
ついて調べてみたところ、先祖の魂を祭る仏教の行事との
記載がありました。
もう少し詳しく見てみると、お釈迦様の弟子で神通力
(何でも見通す力)を持った目連尊者が、亡き母の姿を
見たところ、飢餓に苦しむ世界に落ちていたそうです。
現世にいる自分の力では、母を救うことが出来ません。
そこで、お釈迦様の教えにより、多くの僧侶を招き、
供物を供え供養したところ、たちどころに母が救われた
ということから、飢餓に落ちた先祖を救うために、お盆が
営まれることになったというのです。
そこから転じて、お盆は先祖に感謝し、家族との時間を
大切にする時期ということになったようです。
今年のお盆休み、ご先祖や家族との絆について、考えて
みるのも良いかも知れませんね。
ということで、そろそろ今日の本題を。
今回は、私が最近相続の相談を受けたあるご家族のお話を
させていただきます。
ご当人には、個人情報になるような記載はしないという
前提で今回のメルマガ記載の了解をいただいています。
それでは、今日の本題。
題して、
【相続を意識したときに家族が感じるそれぞれの想い】
どうぞ。
■今から1か月ほど前、60代の既顧客のある奥様より電話を
いただき、「母の相続の相談をしたい」との依頼を受けました。
ここでは、この奥様のことをKさんと呼ばせてもらいますが、
Kさんとご縁をいただいたのは、10年ほど前の生命保険の
ご契約がきっかけでした。
弊社とのお付き合いは、それから要所要所で何度か面談を
させていただいていましたが、今回は久しぶりにそれも突然の
ご依頼となりました。
■聞けばKさんのお母様は現在87歳で、Kさんのご自宅近くの
マンションでひとり暮らしをしていたのですが、年齢のことも
考えて、最近介護付き老人ホームに入所されたとのこと。
Kさんにはお兄さんと妹さんがいるのですが、関東在住という
ことで、お母様の面倒はKさんに頼らざるをえないという状態。
でも、Kさんのご兄妹は、家族同士でみなさん仲が良く、今回
お母様が施設の入所を検討される際も、しっかり連絡を取り
合っていたそうです。
■「最近、お母さんが老いによる衰えがひどくなってきている
ので、そろそろ相続のことも考えた方がよさそうなんだけど。」
こんな感じで話を切り出したKさんにお兄さんは、「最近帰阪した
際に母さんに会ったけど、まだまだ元気そうだったじゃないか!」
と、あまり相続の話には前向きではなかったようです。
しかし、実は、お母様は長男さんに久しぶりに会えるという
ことで、日頃はしない化粧までして、気丈に振る舞って
いたので、お兄さんには最近のお母様の実際の様子がわから
なかったようなのです。
■息子の前で心配かけまいと気丈に振る舞う母の姿と、
母が老いていくという現実を認めたくない息子の気持ち。
息子と母親との関係と言うのは、何歳になってもある種の
感傷的な世界があるようですが、その点娘と母親との関係と
いうのは、意外と現実的な見方をする傾向があるようです。
Kさんの妹さんは、「お母さんが意思をはっきり伝えられる
今のうちにしっかり相続対策をしておいた方が良いんじゃ
ないの?」と、むしろ冷静な判断をされていたということで、
兄妹間で相続の話が一気に進んでいきました。
■お母様の相続にあたって、ご兄妹で話し合ったことは、
お母様の財産については、お母様の意思を尊重するということで、
お母様に遺言書を書いてもらうということ。
来年、相続税が増税になるようなので、遺言書以外に今できる
相続対策があれば、早いうちからやっておこうということ。
■そこで、Kさんが私に相談してくれたという訳です。
早速、私はKさんに司法書士の先生を紹介し、その先生と
ともに遺言書の作成と相続対策のお手伝いをさせていただき
ましたが、Kさんが中心となって、お母様や兄妹間の意思
疎通をとてもうまくしていただいたので、短期間で相続の
対策案がまとまりました。
対策案は、遺言書の作成のほか、孫などへの生前贈与、
生命保険の非課税枠の活用など、比較的オーソドックスな
ものとなりました。
■そして、今週の月曜日。
Kさんはじめ、司法書士及び所員の方、公証人、書記そして
私が、お母様が入所している施設に出向き、遺言書の手続き
のためにお母様と面会させていただきました。
一度に大勢の人と、それも長時間の面会は、高齢者の方に
とって、かなりの負担になると思われるのですが、お母様は
この日もしっかりとした受け答えをされて、無事遺言書の
作成は完了しました。
■ご自身の遺言書作成にあたり、お母様はこれまでの人生を
振り返って、いろいろな想いが去来したことと思います。
遺言の文章作成で事前に打ち合わせをしたときには、少し
混乱した様子も伺えたので、私としては内心多少の心配も
あったのですが、Kさんから早々にメールをいただき、
「大仕事を終え母はほっとした様子でした」という文面に、
正直私もほっとした気持ちになりました。
遺言書は、相続が発生した後に遺族のもとに届く、文字通り
ラストレターとなるものです。
■私もこれまで、幾度か遺言書作成に関わる機会を持って
きましたが、遺言書作成後のご本人の気持ちは、
総じて「ほっと」した感情になるようです。
相続にあたって、たとえ親族で揉めていたことが遺言書を
書く動機になっていたとしても、いざ文章に自分の気持ちを
書き記すとなったら、心の整理がついて、気持ちも比較的穏やか
になるのかも知れません。
というところで、本日の話題はこの辺で。
次回【ライフナビ通信】をお楽しみに。
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◎【編集後記】
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高齢になって、遺言書や相続のことについて、自分で考える
ということは、厄介なことなのかも知れません。
ただでさえ、年々判断力の衰えを自覚する機会が増え、老い
と向かい合う毎日のなか、資産整理や家族間の感情の機微
にかかわる複雑なことは、考えたくもないことでしょう。
ましてや、子供の方から遺言書や相続のことを持ち出された
ら、やっておかないといけないことだとわかっていても、感情
的には受け入れにくものだと思います。
しかし、今回のKさんのお母様の場合は違っていました。
そこには、自分が何かあった後で、子供たちの間で揉め事
は起こさせたくないという思いと、自分の意思を今のうちに
残しておきたいという想いがあったからだと思います。
私は、Kさんのお母様とは2度お会いしましたが、薄化粧を
した柔和な表情から、2度ともそんな意思が感じ取れました。